大ブームの「蟹工船」、週刊マンガ雑誌でも連載が始まった。「週刊コミック・バンチ」。出版社が文庫を出版している新潮社ということもあるけれど、マンガ雑誌にまで登場するというのは、やはりすごい!
横浜のシネマ・ジャック&ベティで、映画も現在上映中。
「蟹工船」本一覧
★小林多喜二著作
・「蟹工船・党生活者」(新潮文庫)1953.6.30出版420円
・「蟹工船 一九二八・三・一五 」(岩波文庫) 2003.6.13出版525円
・「蟹工船・党生活者」(角川書店) 2008.8.23出版380円
・「蟹工船」(金曜日)2008.7.1出版1,365円
・「蟹工船(デカ文字文庫)」(舵社)2006.2.1出版630円
・「小林多喜二名作集「近代日本の貧困」」(祥伝社)2008.8.1出版819円
★漫画
・「マンガ蟹工船 30分で読める…大学生のための」(東銀座出版)
<画家:藤生ゴオ/監修他:白樺文学館多喜二ライブラリー>2006.11.1出版 600円
・「劇画「蟹工船」小林多喜二の世界」(講談社+α文庫)
<画家:藤生ゴオ/監修他:白樺文学館多喜二ライブラリー>2008.9.20出版 600円
・「蟹工船 (まんがで読破) 」(イースト・プレス)
<企画・漫画:バラエティ・アートワークス>2007.10.1出版580円
★多喜二関連
・「小林多喜二とその盟友たち」藤田 広登(学習の友社)2007.12.1出版1,500円
・「私たちはいかに「蟹工船」を読んだか」白樺文学館多喜二ライブラリー
(遊行社)2008.2.10出版 467円
・「小林多喜二私論」右遠 俊郎(本の泉社)2008.2.20出版 1,600円
・「小林多喜二」手塚英孝(新日本出版社)2008.8.1出版 1,995円
・「ガイドブック 小林多喜二の東京」編集委員会(学習の友社)
2008.3.1出版 1,100円
・「小林多喜二と「蟹工船」」(河出書房新社)2008.9.1出版 1,575
突如巻き起こった小林多喜二の『蟹工船』の大ブーム。新潮文庫は、今年だけで50万部を発行、この増刷はまだまだ終わりそうにないという。読者は半分が20~30代の若い層。2種類出ているマンガ(イーストプレスと東銀座出版)もそれぞれ15万部売れている。ワーキングプアや格差社会の深刻な状況が背景にあることはいうまでもない。
これまでなかなか観る機会のなかった映画『蟹工船』も各地で上映されるようになってきた。
首都圏でも、横浜のシネマ・ジャック&ベティで、「緊急劇場公開」される。期間は9月27日(土)~10月10日(金)。1日だけの上映(長くて1週間)が多い中、2週間の上映というのは貴重である。1953年の作品ではあるが、今回はニュープリント上映となる。衝撃の秀作として名高い映画『蟹工船』をこの機会にぜひスクリーンで堪能してほしい。
上映日程
★9月27日(土)~10月3日(金)
10:00/13:55/17:50
(併映「時代を撃て・多喜二」12:10/16:05)
★10月4日(土)~10月10日(金)
10:20/14:25/18:30
(併映「にあんちゃん」12:30/16:35)
前売 1000円
当日 一般1500円 大高1200円 小中シニア1000円
2本立て・入れ替えなし(最終回1本のみは1000円均一)
問い合せ
シネマ・ジャック&ベティ
ある程度予想はしていたが、最も懸念していた事態となってしまった。4月12日公開のドキュメント映画『靖国』の上映予定館5館すべてが上映を取り止めた。各劇場とも上映妨害などによるトラブルを警戒しての判断だという。
先週までは、予定通り上映すると渋谷Q-AXシネマは頑張っていただけに残念である。街宣車などの抗議を受けたことを中止の理由にあげている銀座シネパトスは、2006年にイッセー尾形主演の昭和天皇を主人公としたロシア映画『太陽』を、右翼の妨害が危惧されながらも上映を断行した劇場である(結果、動員記録を更新するヒットとなった)。まさかシネパトスが上映を中止するとは思ってもみなかった。
いずれにせよ、自民党議員による反日映画かどうかを確認すると称した「検閲」まがいの試写会が、大きく影響していることは間違いない。上映中止という事態は、民主主義にとっても映画愛好者にとっても最悪の状況である。
朝日新聞は社説(2008.3.30)で、「映画館に圧力をかけることのないよう呼びかける一方、上映をやめないように映画館を支えるのだ」と提案している。まずは、朝日新聞が先頭に立って、各方面に呼びかけ、言論・表現の自由擁護・『靖国』支援のための試写会を開催してみてはどうだろうか。
「反日」映画に文化庁が助成金を出したのは問題だと、自民党・稲田朋美衆院議員らの要求で、「検閲」まがいの試写会が開催されたドキュメンタリー映画『靖国』(李纓<リ・イン>監督)だが、上映を取り止める劇場が相次いでいるようだ。
4月12日からの東京の上映予定は4館。新宿の「バルト9」は上映取り止めが報じられた。他はどうなっているのか問い合わせてみると、
×「新宿バルト9」-上映中止
×「銀座シネパトス」ー上映中止、
▲「シネマート六本木」ー上映保留、
●「渋谷Q-AX」ー予定通り上映、という状況。
4館中3館までもが上映を取り止めそうな雲行き。
3月27日の朝日新聞で「映画「靖国」文化庁の影」という記事で、この問題の経緯が報じられている。日本映画監督協会理事長・崔洋一監督が「表現の自由への大きな圧力」とコメントを寄せているが、まさに言論・表現にとって深刻な事態である。
劇場もなんとか頑張ってほしいし、「靖国」の上映ができるよう映画人・観客の支援を広げていければと思う。
(なお、状況は確認していないが、他の地域は、横浜ニューテアトル(横浜)、シネマート心斎橋・第七藝術劇場(大坂)、名古屋シネマテーク(愛知)が上映を予定している)。
高橋和也演じる憲法学者・鈴木安蔵を主人公にした劇映画『日本の青空』が、いよいよ11月からクランク・インするようだ。平和憲法がけしてアメリカから押し付けられたものではなく、自由民権運動の精神を受け継ぎ主権在民を掲げた鈴木安蔵ら「憲法研究会」の草案が、GHQによって取り入れられていた、という「秘史」を映画は描く。映画とは関連しているわけではないが、
『憲法「押しつけ論」の幻 』(小西豊治著・講談社新書)が最近出版され、これを傍証する形となっている。
今年6月、衆議院の「教育基本法に関する特別委員会」で自民党・鳩山邦夫委員は、「日本人の考え方が無視されて、押しつけられてアメリカ型憲法ができ上がっていったかということ」をドラマにした『日本国憲法』という映画を製作すると発言している(
山田和夫氏指摘)。監督は、東條英機を「英雄」として描き物議をかもした『プライド・真実の瞬間』の伊藤俊也氏。「改憲」世論の喚起を意図しているのは明らかで、まさしく『日本の青空』と正反対の立場の映画である。また、石原都知事の特攻隊賛美となりそうな『俺は君のためにこそ、死ににいく』も控えている。平和憲法を守るためにも『日本の青空』の製作に対する期待がますます高まってきている。