「傑作」と評判の漫画、こうの史代の『夕凪の街 桜の国』(双葉社¥840)。なかなか見つからなかったが、文化庁メディア大賞をとったこともあってか、最近重版されたようで、ようやく書店でも見かけるようになった。期待が大きすぎると、なかなか満足できなくなってしまう場合も多いが、この漫画は期待にたがわぬ力作だった。「広島の原爆」という重く取っ付きにくい主題を扱っているが、無関心層や拒否反応を示すような読者にも受け入れられそうだ。
出版されたのは、昨年10月なのでじわじわと話題になってきた感じ。昨年は映画でも広島の原爆を描いた『父と暮せば』(黒木和雄監督)が、評判を呼んだが、ともに被爆問題を自分自身の問題として、真摯に見つめ、作品化したというところが共通しいる。ここが読者と観客の心を強く掴んだ点だと思う。戦後60年の今年も、このようなすぐれた「反戦・平和」の芸術が出現することを期待したい。