憲法記念日の5月3日、主要な新聞、読売・朝日・毎日・日経・東京に目を通してみた。朝日・東京が、独自の世論調査結果を1面トップ記事にしている。各紙とも社説には、憲法問題を取り上げていた。
★読売新聞
<-- 社説「新憲法へと向かう歴史の流れ」-->
タブー視されてきた憲法改正論議の封印を解こうとしたのが、94年の読売改憲試案。当時は議論することすら反対する勢力が、政党にもメディアにも、少なくなかったが、今は国民の憲法意識が大きく変わり、国民の賛成は6割を超えている。憲法問題を提起したことは正しかった、と自負している。もはや、新憲法への、歴史の流れを逆流させることは出来ない。
<<読売としては、憲法改正の気運が高まってきたのは、自らの役割が大きかったと声を大にしたいところだろう。まさしく予想通りの社説であった。改憲の牽引車的役割。はたして新聞のやるべきことなのか…>>
他、社説の横に、自民・民主・公明3党のみの争点を図表化、中山太郎(衆院憲法調査会長)・大石眞(京大教授)・御厨貴(東大教授)の座談会、など。
★朝日新聞
1面トップで、憲法「自衛隊規定を」7割 9条改正反対51% 本紙世論調査 の見出し。改正56%、反対33%。自衛隊を憲法に位置づける7割、9条変えない方がいい51%。自衛隊と憲法の整合性を求める反面、平和主義は堅持したい意識がうかがえると分析。
<--- 社説「世直し気分と歴史の重さ」 --->
改憲の「復古的」イメージが、「現実的」「未来志向」に転換。改正賛成が過半数を
超え、漠とした世直し気分が改憲論を押し上げている。現実の改憲には、全文改正の自民党案では、ひとつにまとめるのは至難の業で、世論の関心とも乖離している。9条は日本不戦の証、改正は近隣諸国の不信を増大させる。自衛隊は「武力行使」をしない「平和ブランド」で、戦後日本が築いた資産である。憲法を改めることで暮しよい世の中になり、日本が国際的にも尊敬されるなら拒む理由はない。
<<同じ日の毎日の社説に、朝日は「改正に前向きな姿勢を示した」と指摘されていたが、一面も「9条反対51%」ではなく、「自衛隊規定7割」を前面に押し出した。社説に9条の積極的な意義を書いておきながら、なぜ結論部分が「拒む理由はない」となるのか?>>
★毎日新聞
<--- 社説「改憲への3原則を確認する」 --->
衆院最終報告は、論点は絞られたが、改正の情熱はしぼみ実際には改正できないとみる。現実と憲法の乖離は放置できない問題。改正を考えるにあたり3点を最低限踏まえておきたい。1.平和主義の課題。武力を用いないという「国連憲章前文」の国際的枠組みを前提に、日本国憲法が成り立っている。この原則をことあるごとにかみ締めなおすことが重要。海外での武力行使を封じた9条は日本の反省の最大の証拠。2.イラク・PKO派遣について。国連憲章51条は、集団的自衛権を保障している。日本はわざわざ放棄して旧敵国としての自制を貫いてきた。常任理事国になれば、名実ともに敵国ではなくなり、自衛権を封殺した理由は大きくそがれることになる。常任理事国入りは、日本の国際社会における位置づけを決定的に変える。改憲より常任理事国入りにエネルギーを傾けるほうが遥に効率的で有効なのだ。3.国柄と国民の義務論争。権力を縛り付けるのは憲法の目的で、国民の側が自らの義務を宣言する法律ではない。
<<常任理事国入りが、そのまま信頼回復になる?米国追従のままでは、とんでもないことになるのでは?ちょっと唖然とした>>
他は、各党の見解を掲載。自民・民主は、それぞれ1面の半分近くを裂いいるが、公明・共産・社民は、3党合わせて1面の3分の1足らず。
★東京新聞
1面トップ、9条「改正」48%「維持」33%、憲法改正69% 反対20% 本紙世論調査。「国会先行 国民とズレ」との関連記事。自公民を比較し、各党支持者に温度差と分析。
<--- 社説「見過ごせぬ”戦後”否定」 --->
明治憲法制定時、権力主義者として知られた伊藤博文でさえ、権力者を制約し、国民の権利を守るのが憲法の役割だと言い切っている。明治の政治家の高い見識を示す逸話を紹介し、「現実に即した憲法を」「権利主張ばかりはびこる」など、昨今の憲法論議の次元の低さを批判している。「軍事を最優先する価値観の再登場」「愛国心の押し付けの良心への干渉」など、戦後的価値観の否定が随所に表れ、近代国家の原則が次々崩されようとしている。
<<唯一、憲法改正の動きを全面的に批判している。それもかなり辛辣に>>
★日本経済新聞
<--- 社説「成熟した民主国家にふさわしい憲法に」 --->
新憲法のキーワード国際化・情報化・地方分権・環境。自衛権・自衛の組織保持を明記、参院の権限・規模縮小など5項目を提案。憲法調査会と大筋一致としている。
<<改憲全面擁護だが、参院改革を回避するな、とここに最もこだわっているのが独特>>
他、「改憲、扉は開いた」との大見出しで、各界識者・政党の見解を2面に亘り紹介。
なお、朝日・毎日には、日本共産党の「憲法の改定に反対です」、市民の意見30の会・東京の「憲法9条を変えることにみんなで反対しましょう」という全面意見広告が、載っている。