NHK平和アーカイブスで、7月10日「きみはヒロシマを見たか・広島原爆資料館」が、再放送されていた(NHK特集1982年放映・構成・河野伸洋、鳥居雅之 制作・石沢清史、岩本健一郎 語り・吉永小百合)。
広島平和記念資料館の中学生三位一体の遺品、被爆3時間後の写真、住友銀行の石段の影などの展示物を、関係者の証言をまじえ、紹介している。「石段の影」について、番組では意外な事実を発掘している。熱線によって一瞬に蒸発してしまった男の影だと「10フィート映画」では説明されているが、ひどく被爆はしていたものの、「一瞬」で消えたわけではないことを、遺体を運んだ人と遺族のインタビューで、明らかにしている。しかも、その被爆者は、越智ミツノさんという当時42歳の女性であった。石段の破片を形見にしている娘の越智幸子さんは、だんだん影が薄くなって、複雑な気持ちになると、語っている。
20数年前の番組で、影が薄くなっているということは、現在はどうなってしまっているのだろうか。今回、原水禁大会に参加する機会を得たので、資料館に赴き確認してみた。
左が、「10フィート映画」での石段、右が今年8月のそれである。すでに、意識しなければ気付かないほどに、影は薄くなってしまっている。たしかに「複雑」である。惨たらしい被爆の体験など、本来忘れてしまいたいところであろう。しかし、「原爆」を風化させまいと自らの体験を必死に語る被爆者たち。被爆60年の原水禁大会に参加して、彼らの声に真剣に応えていかなければという思いを強くした。