1988年に東京で起きた「子ども置き去り事件」の映画化。当時はかなりセンセー
ショナルに報道されたというが、ほとんど記憶にない。ネットでの情報も少なく、この
事件について触れられている本は2冊だけ(それも一部分で)、全面的に事件を取り
上げたものは見つけられなかった。おそらく極端に「一過的」な報道だったのではな
いだろうか。
これまでの是枝映画の中では、もっとも分かり易かった。主題の提示の
仕方としては、初期のTVドキュメンタリー『しかし…福祉切り捨ての時
代に』(91年)などに近い感じ。前の『ワンダフルライフ』と『ディスタンス』
は、手法の実験に捉われ過ぎている気がしていた。是枝監督の資質から
して、今回のような方向の作品を今後も観たい。
映画には事件の「結末」は描かれていないので、「その後」が気になって仕方なか
った。また忘れられていた事件が、再び注目されていることを、モデルの子どもたち
(当然現在は成人)はどう思っているのだろう?今日的な意義のある作品であること
は間違いないが、彼らはつらい思いをしているのではないだろうか?
是枝監督のドキュメントを観ると、取材対象者を思いやっている姿勢が伝わってく
るので、ここをどう考えているのか聞いてみたい。