第４権力研究所 d4kms.exblog.jp

• シネ・フロント　社会問題を抉るイノセント・ボイス＆ザ・コーポレーション
  [ 2005-12 -22 23:09 ]
• チャップリンを想起させる『ロード・オブ・ウォー』
  [ 2005-12 -19 00:53 ]
• テレビのタブーに挑む　日下雄一プロデューサー
  [ 2005-12 -16 00:41 ]
• 新聞ジャーナリズムの０５年映画評価
  [ 2005-12 -15 04:47 ]
• 映画監督が７人も参加！映画人９条の会１周年集会
  [ 2005-12 -15 00:58 ]
• カーテンコール　ノスタルジックな作品と思いきや…
  [ 2005-12 -13 03:06 ]
• 横浜日劇、シネマ・ジャック＆ベティ復活！
  [ 2005-12 -05 23:29 ]
• 映画人九条会一周年集会を成功させよう！
  [ 2005-12 -04 00:20 ]
• 伊藤千尋著『君の星は輝いているか』発売中
  [ 2005-12 -01 22:55 ]

　シネ・フロント１１・１２月合併号、発売中。エルサルバドル内戦の少年を描いたルイス・マンドーキ監督のメキシコ映画『イノセント・ボイス　１２歳の戦場』と企業のあり方・問題点を多くの証言から浮き上がらせたジェニファー・アボット監督の『ザ・コーポレーション』、などを特集している。
　中南米の内戦を描いた作品は、『サンチャゴに雨が降る』『ミッシング』『アンダー・ファイヤー』『アルシノとコンドル』『戒厳令下チリ潜入記』『サルバドル』など、特に８０年代は優れた作品が多く作られた。ひさびさにこの主題に取り組んだこの作品も、期待できそうだ。『ザ・コーポレーション』も、ＣＥＯ（最高執行責任者）から労組活動家・市民運動家・学者・作家とさまざまな立場の人物に取材していて（Ｎ・チョムスキーやＭ・ムーアも登場）、面白そう。

　『時代を撃て・多喜二』の植田泰治プロデューサーが、「二重の偏見の中で…」という文章を寄せている。「二重の偏見」とは、記録映画は重苦しくつまらない、小林多喜二の映画は暗く悲しい映画に違いない、と思われてしまうことを指す。この「偏見」から、観客動員は伸び悩んでいるようだ。本サイトでも４月に開かれた上映会をレポートし、「随所にユーモアある場面も交え、飽きさせることのない構成にも感心させられた」と書いたが、ともかく面白い作品である。上映会があったらぜひとも！

「ウクライナの戦術核250発が行方不明」という不気味なニュースが流れているが、いま公開されている映画『ロード・オブ・ウォー』（監督アンドリュー・ニコル、主演ニコラス・ケイジ）は、まさしくウクライナから米国に移り住んだ「武器商人」の男の話である。『博士の異常な愛情』や『Ｍ・Ａ・Ｓ・Ｈ』といった系譜を受け継ぐようなブラック・ユーモアの快作だった。

　内容的には、「一人を殺せば悪党だが、百万人なら英雄です。大量殺人は世界が奨励しているのです。大量殺人では私はアマチュア」と、鋭く国家権力を批判したチャップリンの『殺人狂時代』を想起させられた。同じ日に鑑賞した『男たちの大和』が、あまりに情緒的で国家に対する批判の視点が薄かったため、『ロード・オブ・ウォー』の批判精神が際立って感じられた。
（『ＹＡＭＡＴＯ』については、日本の侵略戦争だったという視点がほとんどないのも問題だと思う）。
久々に骨のある米国映画を観た感じ。単館上映というのはなんとも残念である！

　 『放送レポート』０６年１月号、看板記事となった感のある森達也氏の連載・ドキュメンタリー対談は、「テレビのタブーに挑む」。ゲストは「朝まで生テレビ」の日下雄一プロデューサーで、「朝生」のスタンス・内実がよくわかって面白い。この番組がここまで話題になってきたのは、日下氏のタブーに向き合う勇気と柔軟な発想におうところが大きいようだ。

　権力とメディアの関係をえぐった「記者クラブを出よ」（寺澤有・美浦克教対談）。寺澤氏は、０２年から新聞はとっていないが、全然困らない。プロのライターが新聞をとらなくても困らないのだから、一般市民は、なおさら困らない。新聞の記事はネットで見られので、新聞を取る必要ないとみんな気づく、と語っているのが興味深い。

　映画賞・ベストテンの季節。今週あたりから、新聞各紙に、ベスト作品を選出した総括的な記事が出ている。
「新聞ジャーナリズム」の評価はいかに。
★朝日新聞「私の３点」
◇秋山登「サイドウェイ」「運命を分けたザイル」「パッチギ！」
◇稲垣都々世「亀も空を飛ぶ」「世界」「運命じゃない人」
◇佐藤忠男「エレニの旅」「亀も空を飛ぶ」、「いつか読書する日」
◇品田雄吉「ミリオンダラー・ベイビー」「ライフ・イズ・ミラクル」「メゾン・ド・ヒミコ」
◇秦早穂子「輝ける青春」「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」「世界」
◇柳下毅一郎「宇宙戦争」「アワーミュージック」「亀も空を飛ぶ」
◇山根貞男「オペレッタ狸御殿」「ＴＡＫＥＳＨＩ’Ｓ」「パッチギ！」

★毎日新聞「０５年　私の３本」
◇高橋豊　日本「パッチギ！」「メゾン・ド・ヒミコ」「二人日和」、外国「エレニの旅」「輝ける青春」「ミリオンダラー・ベイビー」
◇中砂公治　日本「村の写真集」「メゾン・ド・ヒミコ」「春の雪」、外国「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」「シンデレラマン」「クローサー」
◇勝田友巳　日本「パッチギ！」「ＴＡＫＥＳＨＩ’Ｓ」「ゲルマニウムの夜」、外国「ヴェラ・ドレイク」「ハックル」「チャーリーとチョコレート工場」　
◇戸澤美佐　日本「メゾン・ド・ヒミコ」「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」「パッチギ！」、外国「オオカミの誘惑」「香港国際警察/NEW POLICE STORY」「キング・コング」　　　　　　　　　　
◇高橋諭治　日本「狼少女」「ある朝のスウプ」「誰がために」、外国「ボーン・スプレマシー」「ボビーとディンガン」「ランド・オブ・プレンティ」
◇細谷美香　日本「リンダリンダリンダ」「パッチギ！」「誰がために」、外国「ミリオンダラー・ベイビー」「サイドウェイ」「亀も空を飛ぶ」

★赤旗
◇山田和夫　日本「パッチギ！」「リトルバーズ　戦火の家族たち」「ガラスのうさぎ」「カーテンコール」「ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日」
◇村瀬広　外国「タッチ・オブ・スパイス」「エレニの旅」「マイ・ファーザー」「輝ける青春」「ヴェラ・ドレイク」

日本映画は、６人の推している「パッチギ！」が圧勝、次が４人の「メゾン・ド・ヒミコ」。外国は、４人の押す「亀も空を飛ぶ」以外は、かなり分散している感じ。

　映画人９条の会の１周年の集会が、１２月１３日開催された（東京文京区シビックホール）。
第１部は、「映画監督、９条への想いを語る！」で、大澤豊監督・神山征二郎監督が発言者として登場した。
◆大澤監督「終戦時１０歳だったので、新しい憲法はわからないところもあったが、ともかく戦争しなくなったことがうれしかった。９人の知識人による「９条の会」の設立記念講演をきいて、涙が出るほど感激した。自分は映画で運動を進めていきたい。夏には、憲法をテーマにした劇映画を公開する予定。」
◆神山監督「シナリオ作家協会や映画「さくら」などで、中国との交流を経験してきたが、中国側の危惧が現実のものになった。中国を敵視した小泉外交は、退陣に値する大失政。あまりにひどすぎる。しかし、個人の力はたかが知れているので、憲法でチェックし、その意義を広げていかなければならない。」

第２部は、川本喜八郎・高畑勲両監督による「アニメ作家、９条への想いを語る！」
◆川本監督「来年岩波ホールで折口信夫の「死者の書」を公開する。死者を鎮めることが主題で、古来から日本は敵も見方も区別なく、鎮魂してきた。これまで、メッセージ性のある作品は作ってこなかったが、今回は靖国問題を意識した。」
◆高畑監督「小泉首相の支持率が５８％とＮＨＫは報じていた。改憲勢力が３分の２になるとは、思いもしていなかった。イタリアの映画祭に先月参加してきたが、ヨーロッパは町が機能していると感じた。アメリカは車がなければ生活できない世界。日本もアメリカにべったりで、その方向に。いままでは責任をとらず、ずるずるきているので、９条がなくなることを考えると恐ろしい。５８％の支持者も被害をこうむることを、知らせてかなければ。」

第３部は「国際的視点から、９条への想いを語る！」で、池田香代子氏とジャン・ユンカーマン監督が発言した。
◆池田氏「９・１１問題から書いた　「世界が１００人の村だったら」とこの本のイメージ曲・レノンの「イマジン」は、９条と同じ精神。憲法の絵本をつくっていて、１３条を９条が支えていると気がついた。自民党の集まりにもよくいくが、９条を変えることに恐れを感じる人も多い。条約を守ることや外国人の人権を尊重するなどは、新たに加えたいことろ。ひとり５人今日のことを伝えてほしい。」
◆ユンカーマン監督「　「映画日本国憲法」は、教材用として作り始めたが、劇的なので多くの人に見てもらおうと思い直した。憲法が変えられようとしていることと、実現していないことが悲しいところ。日本は戦争をしない国というのは、世界中に知られている。アメリカと戦争に向うか、アジアと共生していくか選択を迫られている。爆笑問題の太田光が９条を世界遺産に、と主張しているように、この動きは希望を持てる広がりをみせている。」

なお、客席には、降旗康男監督と羽田澄子監督の姿もあった。

５１７人で発足した会が、現在１０９７人となったと、高橋邦男事務局長より報告され、１．会員を大幅に増やす　２．学習・宣伝活動　３．９条反対の意思をさまざまな形で表明　などの訴えが呼びかけられた。
映画人九条の会

　佐々部清監督の『カーテンコール』は、「昭和３０年代」に映画館の幕間（まくあい）で、芸を披露していた男にまつわる物語。『ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日』と同様、これも「昭和３０年代」ブームに乗ったノスタルジー映画と思いきや、在日朝鮮人問題が絡む意外な展開に。藤井隆はもっと見ていたいと思わせる好演、鶴田真由も今までの見た作品の中で、もっとも良かった。

　甘美な「懐かしさ」に浸っていられない厳しい現実を突きつける社会派映画の秀作だった。
　映画観客人口のピークの年であり、東京タワーが完成した年である「昭和３３年」が、最近見た『メゾン・ド・ヒミコ』『ＡＬＷＡＹＳ　三丁目の夕日』『カーテンコール』の、いずれも重要なキーワードとなっていたのが、興味深かった。

　久々の「横浜日劇」情報。朝日新聞・神奈川県版(05.12.5)に、「横浜日劇の灯再び」の記事が掲載されている。今年2月に閉館したこの劇場の「レトロ」な外観を生かして、結婚式やパーティなどのイベント会場として復活するという。
　「映画館」としてではないのは残念であるが、同じく閉館していた道路を挟んだ真向かいにある「シネマ・ジャック＆ベティ」が、8月にリニューアルオープンしているので、映画はこちらで楽しめる。閉館してからすっかり足が遠のいたこともあって、「ジャック＆ベティ」が復活していたのを、不覚にもしばらく気がつかなかった（情報誌にはちゃんと載っていたのに！）。
　経営は「フレンダム」という会社になっている。旧Ｊ＆Ｂ体制が引き継がれているのかどうか定かではないが、中央興業とは関係なさそう。いずれにしろ「横浜日劇」「ジャック＆ベティ」の予想外に早期の復活、ファンとしてはたいへん喜ばしい。"シネコンなどには真似出来ないオリジナルのコンテンツで、新しいスタイルの映画館づくりを目指していきたい"、と支配人氏はＨＰに書いているので、個性的な番組が期待できそう。

写真：久しぶりに劇場へ行ってみた(05.12.5)。日劇はまだ閉館時のままだったが（上）、Ｊ＆Ｂはしっかり営業していた（下）。
シネマ・ジャック＆ベティ

映画人九条会一周年集会を成功させよう！（映画人九条の会ｍａｉｌ Ｎｏ．１０より）
　12月13日（火）の映画人九条の会一周年集会が近づいてきました。

　自民党は11月22日の結党50周年大会で、憲法９条第２項を削除して「自衛軍」の保持を明記した「新憲法草案」を正式に発表しました。日本をアメリカの言いなりに戦争する国にしようという改憲の策動はますます加速していますが、おごる自民党に危機感を感じ、９条改憲に反対する運動も前進しています。

　全国の九条の会は3000を超え、結成一周年を迎える会も少なくありません。私たち映画人九条の会も今年11月24日で満一周年を迎えました。一周年記念イベントとして12月13日に行う一周年集会「映画人､九条への想いを語る！」をどうしても成功させなければなりません。東京近在にお住まいの映画人九条の会会員の皆さん、皆さんの周りの人にぜひお声をかけ、誘い合ってご参加ください。お待ちしています。

12・13 映画人九条の会一周年集会
映画人、九条への想いを語る！
　映画人が九条へのあつい想いを語る、知的でエキサイティングなリレートーク集会！

発言予定者
★池田香代子さん
（作家・字幕翻訳者。「世界がもし100の村だったら」がベストセラーに）。
★大澤豊さん
（映画監督。「GAMA 月桃の花」「アイ・ラブ・ユー」「アイ・ラヴ・ピース」など）。
★海南友子さん（スケジュール調整中）
（ﾄﾞｷｭﾒﾝﾀﾘｰ作家。「ﾏﾙﾃﾞｨｴﾑ彼女の人生に起きたこと」「にがい涙の大地から」）。
★神山征二郎さん
（映画監督。「遠き落日」「月光の夏」「ひめゆりの塔」「郡上一揆」「草の乱」など）。
★川本喜八郎さん
（日本を代表する人形ｱﾆﾒｰｼｮﾝ作家。「三国志」「平家物語」「死者の書」など）。
★ジャン・ユンカーマンさん
（記録映画作家。ﾄﾞｷｭﾒﾝﾀﾘｰ映画「チョムスキー9・11」「映画日本国憲法」など。）
★高畑勲さん
（ｱﾆﾒｰｼｮﾝ映画監督。「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」「ホーホケキョとなりの山田くん」など）。

日時 2005年12月13日（火） 18:45～21:00
場所 東京・文京シビック小ホール（文京区春日1-16-21 TEL 03-5803-1100）
　　　　　地下鉄丸の内線・南北線「後楽園駅」徒歩0分
　　　　　都営三田線・大江戸線「春日駅」徒歩1分
参加費　　1000円
主催 　　映画人九条の会
〒113-0033
　　東京都文京区本郷2-12-9 ｸﾞﾗﾝﾃﾞｨｰﾙお茶の水 301号 映演労連内
　　TEL 03-5689-3970　FAX 03-5689-9585
　　Eメール＝webmaster@kenpo-9.net

　シネ・フロント、8年ぶりの単行本、伊藤千尋著『君の星は輝いているか・世界を駆ける特派員の映画ルポ』が発刊された。
（紹介チラシより）
　信念と理想と夢さえあれば、人間は自分らしい人生を全うできる！－混沌とした現代にあって、未来への希望を熱く語る！！－
　１９７１年、学生時代にキューバで砂糖キビ刈り国際ボランティアに参加し、卒業した73年には「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。翌年に朝日新聞社に入社、長崎支局、東京本社外報部などを経て84年サンパウロ支局（中南米特派員）、91年バルセロナ支局長、2001年ロサンゼルス支局長を歴任してきた伊藤千尋氏。
　本書は、現在「アジア記者クラブ」代表、「コスタリカと手をつなぐ会」共同代表でもある著者が、これまで世界65カ国を現地取材してきた体験を、数々の映画とともに＜熱く！＞語る映画ルポルタージュです。